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More info about National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST) 2004.8.23 発表 ■ppbレベルの鉛の目視検出に成功 −環境の簡易モニタリングが加速 誰でも、その場で、安価に測定− ● ポイント 概要 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という) メンブレン化学研究ラボ【ラボ長 水上富士夫】は、従来困難であったppbレベルの鉛イオンの膜による濃縮と目視による簡易検出に成功した。この簡易計測技術によって、環境水、工業廃水中の微量の鉛イオンのモニターが現場で、安価に達成できると期待される。
研究の背景 人体が長期間鉛にさらされた場合、脳や神経に致命的な損傷を与えることが明らかになり、WHOは10ppbという厳しい環境基準を勧告している。我が国でも、環境基準ならびに水道水基準として10ppbが定められている。環境水に加え、上水道の鉛配管からの鉛溶出による飲料水汚染も深刻な問題となっているため,そのモニターは重要な課題である。現状では、10ppbレベルの濃度の計測は大型機器による分析が必要であった。したがって、鉱工業排水や河川水、飲料水などの水溶液中に微量に存在する鉛イオンを、分析現場で誰でも簡便に検出できるような、汎用性のある鉛イオン計測法の開発が急がれている。一方、上記の水質基準値を満足する高感度で簡易な計測方法はほとんど見あたらない。 研究の経緯 発明者らは、ppbレベルの微量イオンの検出には、あらかじめ分離・濃縮して検出する必要性を痛感していた。鉛イオンと選択的に反応するリン酸セリウムが繊維状結晶を形成するという知見にもとづき、リン酸セリウムの繊維状結晶からシート状の濾紙を作製した。この濾紙により検水をろ過することで鉛イオンを選択的に濃縮出来ること、また発色試薬により発色させ、ppbレベルの鉛濃度が目視で判断できることを見出した。すなわち、ろ過による鉛イオンの分離濃縮と、発色により、極微量の鉛イオンを現場で簡易に計測する方法を見出した。 研究の内容 鉛イオン簡易検出法は,リン酸セリウムが鉛イオンを選択吸着し、しかも繊維状の結晶のため、ろ紙状に成形できることに着目し、ろ過膜として鉛イオンを分離濃縮した後これを発色試薬により発色させて、その濃淡により鉛の濃度を計測する方法である。ろ過により鉛イオンを分離濃縮するろ紙は、繊維状のリン酸セリウム単独ないしは、セルロースなどの繊維と混合してシート状に成形したものより成る。検水の体積を増せば検出感度が向上し、100mlの検水を用いると、5ppbレベルまで検出が可能である。 今後の予定 深刻な鉛汚染の問題に対し、誰でもその場で水質基準値までの低濃度の鉛イオン濃度を計測できる簡易な方法として普及したい。とりわけ、環境水の現場でのモニター、途上国での使用など高度な分析機器が利用できないところでの普及を目指す。そのため、簡易計測関連企業、濾紙関連企業との協力による実用化を図りたい。 用語の説明 ◆ppb ◆大型機器分析によるPbの検出限界
◆膜濃縮 ◆簡易計測技術 ◆RoHS ◆リン酸セリウム
◆発色試薬 問い合わせ 独立行政法人 産業技術総合研究所 東北センター
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